飽和に近づいた全面的音列技法とケージのもたらした全面的偶然性の間で引き裂かれていた1950年代のブーレーズにとって、
あらかじめ用意しておいた構成要素をアト・ランダムに並べ替えて万華鏡のように変容させてゆくというマラルメの『書物』
の構想(それに関する遺稿はシェレールによって57年に刊行された)の発見は、新鮮な衝撃だったに違いない。今回コピーが
展示されたシュトックハウゼン宛の未刊の書簡(57年9月28日付)では、ブーレーズはその発見を「エピファニー」とさえ呼
んでいるのだ。そこから、「管理された偶然性」の手法が体系化されるとともに、マラルメの『書物』の音楽版とも言えるピ
アノ・ソナタ第3番(56〜57年)、さらに、マラルメの詩による『プリ・スロン・プリ』(57〜62年)が書かれることになる
だろう。また実際、煌く星座のような音群を夜の虚空に散乱させてゆくブーレーズの音楽は、前世紀末の象徴主義的な雰囲気
を欠いているにもかかわらず、あるいはまさにそれゆえに、どんな音楽よりもマラルメ的に響くのである。