深井史郎「恐るる者への風刺」より

三人の中の第三の男は黛敏郎(1929-)である。
とにかく彼は彼の行くように行くのだから、
むずかしい言葉をここで並べてみてもはじまらない。
彼の音楽は構造上の仕掛けが少し足りなくて、
しかもはなはだ絵巻物的で横へ横へと移動する。

思いつきは非常によく、分かりにくいところは一つもない音楽だが、
この点を知ってか知らずか、彼はいつも「スフェノグラム」だとか、
「トーンプレロマス」だとか「エクトプラズム」だとかいう
わけのわからない題名を字引きの一隅に探し当てたり、
また適当なコイネージを造りあげたりする。
これはゴリラ的な彼の頭のデフォルマシオン同様に、
一種の愛嬌ある韜晦(とうかい)なのかもしれない。

彼はまたミュジック・コンクレートやエレクトロ・ムジークのための
第一線の選手でもある。