内容:東洋文化を世界文化に止揚する時代に、諸井氏およびその一派と民族主義的作曲家の一派が手を握る機運を現出し始めたのは喜ばしい。
/諸井三郎はベルリンのホッホシューレ出身でシュラッテンホルツに作曲および理論を師事、ブラームス楽派の直系である。また、諸井によればセザール・フランクの芸術に影響を受けたそうだが、フランクの宗教的な高い理念にまで到達することが諸井の未開拓の世界である。
/諸井三郎の芸術の美点はその理論的構成力にある。秩序と部分の構造およびその相互関連においてある見事な完成を示している。諸井の「旋律」はトナリティが明確であることは少なく、より無調的になる。
/諸井の場合、理論は思想に結びつくよりむしろ「技術」と結びついているようにみえる。諸井の芸術は生活的・具体的な現実生活からますます遠く抽象的になる。
/早坂が諸井に期待するのは、諸井が西欧的知性や教養の豊かさ、理論的構成力、自意識などをすべて洗い落とし、真の自己自身に徹した超脱的・超越的な、深い人間感を伴った単純化の芸術に入ることである。