>>367

それに答えるためには回りくどいことをしなければなりません。
ブルックナーのスケルツォはソナタ構造(提示部・展開部・再現部)であることは良く知られていますね。
初期の場合はコーダが付くことがあります。
ところが「第九」のスケルツォはちょっと変わっています。
簡単に言えば(序奏部・提示部・展開部・再現部)の4部で出来ているのです。
この序奏部が曲者で、テンポも一緒なら主題も一緒。だからある種の人には混乱が起こるのです。
で、もっと突き詰めていけば(第1展開部・提示部・第2展開部・再現部)というような感じになります。
こんなことをグダグダ書くのはなぜかというと、ご質問のpizz.は、主題ではなく展開だという認識
をはっきり持つ必要があるからです。

主要主題は《A》43小節から始まります。Dの保続音上のトリスタン和音の分散和音形は
完全にニ短調主和音に解決します。ここがトリスタンと違うところなのです。
トリスタンのことはよくわかりませんが、曲頭のチェロの部分だけを見ると、トリスタン和音は
属七の和音に解決(!)します。属七自体が解決を求める和音ですからこれでは解決になりませんよね。
だから解決しないものがうねうねと繰り返されるのがトリスタン和声だと思うのです。
ちょうど、満たされぬ恋が常に焦燥感をもたらすようなものを表現するときに最適な和声だと思います。

ブルックナーはここで、単にトリスタン和音を使っただけで、和声のつながりについては全く違う考えです。

さて、それでは展開の一形態としてpizz.の動機を見てみましょう。下がる時の構成音は主要主題と全く一緒ですね。
ところが上がるときは半音下の嬰ハ短調に変わっています(変わっているという思想が大事!)
この短三和音ほとんどトリスタン和音と同じ音構成です。したがって全く解決になっていません。
ブルックナーはこのことがこの曲でやりたかったことです。
すなわち、トリスタン和音を介したニ短調と嬰ハ短調の対比!

この部分、僕には、トリスタン和声をあざ笑っているようにしか聴こえません。