「ワタナベ君、あなたどういう音楽家が好きなの?」
と直子がふと思いついたように小さな声で聞いた。
「エーリヒ・クライバー」と僕は正直に答えた。
レイコさんが練習をやめてギターをはたと膝の上に落とした。
「あなたまだ二十歳になってないでしょ?いったいどういう生活してんのよ、それ?」

直子は何も言わずにその澄んだ目でじっと僕を見ていた。