最近新聞に出てたけど、音楽家と素人では音楽の聴き方が違うそうだからね。
素人はもっぱら情動的、感覚的な部分の脳を働かせ、一方、音楽家は
より脳の高次な働きを持つ部分を使うそうだ。

バックハウスは指先にアタマがあるような演奏をするから、(知性やハート
じゃなく、腕が音楽を導いている)ある程度音楽のことを深く知っている人
(あるいは自分でピアノを弾く人)ほど、拒否反応を示す傾向があるんじゃないか。

それでも、いわゆる「3大ソナタ」(あるいはG・グールド言うところの
『ベートーヴェン中期の超大型爆弾』)あたりは楽曲の性格上、良い演奏に
なってると思うが、後期ソナタは最悪に近い。
上の方で出ていた「ハンマー・クラヴィーア」の演奏はその典型例だろう
(特に第1楽章の大きなテンポ変動には何の説得力も無い)。

バックハウスのことを、「音楽、教養、高邁な理想が綿密不可分に結びついてる、
形而上の美を体現する古き良き時代のピアニスト」と形容するのは、
誤解も甚だしいと思う。余暇に何をしますか?と質問され、
「ヒマなときにはピアノをさらっている」と語ったバックハウスは
あくまでも純粋に大ピアニストであっただけで、それ以上でもそれ以下でもない。

しかし、長年にわたるブランド化の甲斐あって、技巧が達者でそれなりに
安定して聞こえるし、素人が聞き流す分にはなにか意義深い演奏に聞こえるのだろう。