あれはハラハラとは違うと思う。ピアニストには2種類あって、メカニックの
ミスが気にならない、あるいは演奏における本質的な問題とならないタイプと、
ミスがあると致命傷になるタイプ。ケンプは明らかに前者だと思う。
だからボロボロになってしまっても、なお語るべきものがあったし、表現できた。

ケンプが世に出た時期のヨーロッパでは、指廻りの精確さ自体はピアニストの
評価の上でそれほど重大視されていなかったみたいだね。E・フィッシャーなんかも、
著作の中で「ピアニストの間違いは大目にみられる」とか書いてるし。