シューベルトは緩徐楽章にアンダンテを好んだ。
さすらい、歩くことを歌に託したのだと思う。
たまに書くアダージョ、たとえば「アルペジョ−ネソナタ」や「八重奏曲」
にも深遠・静謐なアダージョ的部分とともに歌の心は失われてはいない。
したがって極端に遅いテンポは不可である。常に逍遥し孤独に歌い続ける
ことが必要である。
「未完成交響曲」にも典型的に現われているけれども、彼の音楽はテンポ感
の変化の少ないものであることが一大特徴なのである。
彼の音楽は、いつも歩き、いつも歌っているのである。

「どんなにゆっくりでも良いからこの音楽が永遠に続いて欲しい」

こういう思いは、シューベルトファンなら誰しも持つものだろう。
しかし、それはアンダンテに対してではなく、フィナーレに対してである。
「弦楽四重奏曲15番」、「ピアノトリオ変ホ長調」、「ピアノソナタ19番ハ短調」
の各フィナーレに特に強くそれを感じる。