クレがストラヴィンスキーの曲を演奏するときに作曲者を呼んだそうな。
そのリハーサルで客席に座っていたストラヴィンスキーいわく、

「私は音の洪水の中で溺れ死にそうになりました。私はすぐにパートバランスを整えてくれるように頼みました」

クレがやっていたのはスコアに書かれていた全パートを同時に並列して鳴らして、
オーケストラとして普通のピラミッドバランスで鳴らさないということ。

言ってみればウェーベルンみたいに各パートをひとつひとつパレットとして使用して空間に配置。
そして同時にそれを配置するから、スコアの全パートが同時に屹立してしまう。
つまり、対旋律や別パートの間に主客関係が希薄。

その方法論に実は、耳自体は古典的な部分を色濃く持って、
一般的な和声で演奏することを前提としていた作曲者がたまげてしまったということなのじゃろう。

クレの特徴は全パートを並列して同時に屹立させるところだと思う。
その点、空間的対位法の鬼というのがクレの肝だと思う。
これだからクレのバッハはたまらんです。