ドイツとオーストリアの問題まで論じるとキリがないんだが、おおむねこういうこと。
石井氏はヘンデルはイギリス人と呼ぶほうが適切としながら、モーツァルトはドイツ人と呼んでいる。
それは、彼の生きた18世紀末がちょうど「ドイツ」という国家意識、民族意識が高まった時期であり、オーストリアはその一部というより中心と考えられていたからである。
(事実神聖ローマ帝国の首都圏であり、その崩壊後はドイツ連邦の議長国である)
この考え方は19世紀後半にオーストリアがドイツ帝国から締め出された後も残り、ヒトラーまで続いている。
戦後ようやくドイツと別の国としてのオーストリアのアイデンティティを求めるようになったが、一部右翼に国号をドイツにしようという人はなお存在する。
で、この18世紀末から20世紀前半というのが、ドイツ民族主義と同時にドイツ中心音楽史観が作られた時期であり、これを否定的にみようが肯定的にみようがモーツァルトはそこに含まれる。
というより、「ドイツ舞曲」や「魔笛」を書いた彼はその中心的偶像でもあった。
バッハは確かに現ドイツ国境の中の人ではあるが、それだけにむしろドイツ人意識の薄い人であり、民族の偶像としては弱い。