二年程前のはなし。
一人で酒飲んで酔っ払って、フルトヴェングラーの『第九』バイロイト・1951年ライブを聴いていたら、
隣の部屋で寝込んでいた鬱病の彼女が近寄ってきた。その時、俺泣いていたかもしれない。
この演奏との出会いとか、中学生の時に毎日聴いてたから千回以上は聴いたろうとか話していた。
無性に、曲に合わせて指揮(マネ)がしたくなった。そして、彼女にも指揮(マネ)をさせたくなった。
この音楽を何故俺が好きなのか、どれほど好きなのかを知ってもらいたかったのだと思う。

後ろから抱え込み、約70分、彼女の腕を指揮者のように動かし続けた。時に激しく情熱的に、時に優雅に。
当時はセックスも出来ない状態だったから、擬似セックスのような意味もあったのかもしれない。

『マタイ受難曲』『ロ短調ミサ』も寝る時のBGMによくかけたな。
ほかの曲はうるさくて眠れないと言っていたが、これらも不思議とOKだった。(俺も同じだった。)
その後、一緒に病院へも行くようになり、仕事ができるまで回復した。まったく不思議なものだな。