♪〜あの日あの時あの場所で♪〜
この一ヶ月、恋人のカンチとは会っていない。
ため息をついたリカは、またいつもの独り言を繰り返した。
やっぱり私が言いすぎたせいなんだわ。
ちょうど一ヶ月前、リカはお気に入りのドリカムの限定版CDをカンチの不注意で割られてしまった。
リカはあまりのショックで我を忘れ激しく怒った。二人は大ゲンカになり、それから一度も連絡を取っていない。
考え事をしながら歩いていたためか、リカは投票所となっている小学校の校門の目の前まで来ていたことにようやく気が付いた。
そして、十何年ぶりに訪れた小学校の校庭を目にしても何の感慨にふけることもなく、
ただ、恋人との関係を悲観するばかりであった。
投票所である体育館の階段を一段一段と重い足取りで上がり、入り口まで来たリカはまた一つため息をついた。
私にとって無意味な選挙。
わざわざ私がしなくても。
そう思い、リカは今来た道を帰ろうと、うつむきかげんの顔をフッと上げ、体を後ろに向きかけた、その時だった。
リカの目に思いがけず飛び込んできたのは恋人カンチの姿だった。
「カ、カンチ!」
リカは目を疑ったが、それはまぎれもなく選挙管理委員として投票所で立ち働いていたカンチだった。
カンチはその声に気づき、仕事を放り出し、受付のテーブルを跳び越え、リカの元に駆け寄った。
「リ、リカ!ごめん。」
カンチは急きょ選挙管理委員を頼まれ、この一ヶ月、選挙の準備で忙しかったことが会えない原因だったのだと説明した。
そして、カンチは思わずその場でリカを抱きしめた。
「す、好きだ、リカ!愛しているよ!」
リカは熱くなった。
心の底からわきあがる感情を抑えられなかった。
「カ、カンチ!カンチ!カンチー!」
リカはうれしさのあまり大声で恋人の名を叫んだ。
そして、胸元で握りしめた投票用紙を涙が静かにぬらした。
館内からは拍手がおこり、そこに居合わせたすべての人が若い二人を祝福していた。
そしてその後、リカは生まれてはじめての投票を終えた。
その夜、テレビは民主党の勝利を伝え、日本は大きく動きはじめたのだった。

11月9日、一人でも多くの若者に選挙に参加して欲しいです。ぜひ!
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