ハーンは本物か?

若い無垢な精神が素直に楽譜と対峙しているだけはないのか。
もちろん、超ハイテクは感嘆するが。
天性の高度な音楽性とどちかといえば陽気とおぼしき気性が
譜面をあるがままに読み込んだ姿を見ているような気がする。

思い出されるのが、若かりし頃の、まさに10代のムターである。
ムターがまさにムターとしての音楽をわれわれに聴かせるように
なったとき、彼女は三十路の門を開いていたではないか。

逆に10代にして強烈な自意識を持っていたチョンは個性の塊だった。
弦から煙があがるのではないかと思わせるほどの強烈なボウイングから
生み出される音楽はチョンそのもの。
評者が二分するほどの出来事だった。

若くしてバッハ、ベートーヴェン、ブラームスをリリースしたわけだが、
いまだ音楽的、というより芸術的な評価は判然としていない。
当然二度三度と再録があるだろう。
ハーンの真価はまさにそのとき問われるであろう。

来日のたびにどれほど進化したのかを確認したい逸材であることは素直に
認めよう。