人間だったら金を稼ぎ生活しなければならない。音楽文筆業者も人間のうち。
そして音楽文筆業者の生活手段は、音楽に関する文を書いて売ること。
その結果もうかればしめたもので、そのためなら利用できるものは何でも利用。

たしかノンフィクション作家の柳田氏が、子息の自殺で精神的に落ち込んで
いた頃に、メンゲルベルク指揮の「マタイ」を聴き嗚咽した、とのエピソードを
柳田氏が自ら文にしたことがあった。
いつだったか、レコード芸術誌で「マタイ」が特集されたとき、そのエピソードが
そのまま掲載されていたが、その次のページには宇野の文が載っていた。もしや
他人のエピソードを我田引水するのでは、と思いながら読んでいたら案の定!
いかにも、メンゲルベルクの「マタイ」を好む宇野らしかったが、宇野にとって
エピソードの主が、知名度が高い柳田氏だったことは好都合だったに違いない。

早い話、音楽文筆業者が、自分の駄文に「ハク」を付ける過程の
典型的サンプルを見せ付けられた気がした。「あくどい」以外の何者でもない。