吉田秀和翁の仕事は音楽評論にとどまらない。
さっき「荷風を読んで」を読み返してみた。これは一種の日本文化論とも言えるエッセイだ。
日本人は紀元6世紀に圧倒的に優勢だったアジア大陸の先進文化を取り入れて模倣したが、
明治維新を境にまるで違う歴史と伝統を持つヨーロッパ文化を是が非でも模倣しなければならない
ハメに陥ったところに近代日本の悲劇があるなどという一節は、まるで司馬遼太郎のエッセイを
読んでいるような錯覚に陥った。調べてみると吉田の方が司馬より10歳年長なのだが、全く異なる
分野で活躍した2人にもかかわらず、問題意識のありようはほぼ同じだったように思われる。
というより、知識人すべてに共通する大問題だったのだ。
アジアの伝統にヨーロッパ先進文化を接ぎ木することの矛盾や問題意識は俺の世代(40前後)でも
決して解消していないが、より若い世代の20代はそんなことは考えないのだろうか。1966年に
書かれたエッセイだが今でも現代的な意義を失っていない。年を取るとともに、つまり歴史を知るに
つれて強く意識される問題であるだけに、若い奴らにはそうした意識が「まだ芽生えていないだけ」
かも知れない。
とマジレスしてしまったのはやや悔やまれるところだ。