僕は大学に入って基礎を飛ばしてすぐに
 ショパンの「子犬のワルツ」を練習し始めました。
 人間、誰しも小脳を持っている限り「運動記憶」というものが可能で
 「ある程度」弾けるようになります。そう、「ある程度」です。
 それは、私達が自転車が乗れるように、
 体が「子犬のワルツ」を記憶しているだけなんです。
 だから完全に暗譜もできるし、慣れれば速く弾くことだって可能です。
 しかしそんなものは所詮、グラグラの基礎の上に建てられた建築物なのです。
 それで「オレは『子犬のワルツ』をマスターした」などと言うのは、
 まさにうぬぼれの世界だとは思いませんか?
 耳の肥えた第3者が聴いて、それを果たして上手な演奏と思うでしょうか?
 「まぁ・・・だいたい合ってるけどね」
 なんて程度に思われるのがオチでしょう。
 それでも90%以上の聴衆は「上手だったね」とお世辞で褒めたてます。
 「あなたは下手でした」なんて本人の前では口が裂けても言えません。
 そうして、お世辞がその演奏者を無意味な高揚感へと押し上げる。
 そして「オレって上手いのかも」なんて幻想を抱きます。
 そう、斯く言う僕もそうだったのです。
 その深み・スパイラルから脱出するには自分で気付くしか方法はありません。
 あるいは、超辛口コメントをしてくれる第3者に気付かせてもらうか、です。