「たった一つの正解」は存在しない

教員・浅岡弘和(東京都葛飾区・47歳)

 一昨年だったか、女優の高木美保さんが自宅の小鳥の巣箱を蛇が襲うのを見て、
これも自然の摂理かと放っておいたことを書いたエッセーが『正論』読者の間で物議
を醸したことがあった。また氷の海に閉じ込められたクジラを救えと欧米の砕氷船が
出動したというニュースを聞いたこともある。

 今回のタマちゃん騒動もそれらに似たことなのかもしれないが、私は以前、動物園
の飼育係をされている方の文章で、ニシキヘビの檻に生き餌として生きたウサギを
入れたら、少女が悲鳴を上げながら「助けて! ウサギがヘビの檻に」と助けを求め
にやって来たという話を読んだ記憶がある。

 そこで、その人はヘビには生き餌が絶対必要だという真実を教えるより、自分が今、
動物園のおじさんと一緒に一生懸命小さな命を救ったという思い出を持たせた方が、
将来、その少女が大人になって全てを知った時、よりいっそう命の大切さをわかって
くれるのではないかと考え、それこそ脱兎の如く駈け出したという話だった。

 迷子のアザラシは放っておいて死なせるのが自然の摂理だと教えるのも一つの
道理ではあるが、この場合は娘さんの希望通り、たとえ危険を伴ってでも捕獲し保護
した方がベストだと思う。最後の最後まで捕獲を先延ばしにし、結局、絶滅させてしま
ったトキの例もあるが、世の全ての事例について「たった一つの正解」は存在しない
のである。

http://www.sankei.co.jp/pr/seiron/koukoku/2003/0305/ronbun1-2.html