ついでに日本におけるこの種の本について言っておくと、どうもその最初の
ものは私の『第三帝国と音楽』だったようである。・・・(略)・・・
もう一つの日本の筆者による本は長木誠司『第三帝国と音楽家たち』である。
ここでは私のものに比べ、いわゆる「クラシック」音楽界の情報は格段に増
えている。この本はいろいろな原書から情報をまとめたもので、注がついて
いないところでも、どの参考文献から転写されたのかわかってしまう部分も
多い。とりわけ一九九七年に原書が出版されたこのケイターの本にかなりの
部分を負っており、情報のみならず、ケイターのきめて個人的な着想である
冒頭の《シンドラーのリスト》の一場面を扱った部分までそっくりそのまま
書き写されている。そして残念なことに著者がこれらの情報に対して自分な
りの態度を持とうとしていないため、感覚が摩耗したような羅列に終わって
しまう。むしろこの本で読むべきは主部というより、最後に付記されている
日本に亡命してきた音楽家マンフレート・グルリットの小さな章である。