この演奏の性格を一口に言うと、死を前にした個人の苦悩と、人類の終末・世界の崩壊が、
忘我の内に完全同一化を果たした究極の姿、ということになるだろうか。
生への執念と告別、愛への半狂乱と皮肉、死への恐怖と陶酔…
この凄絶さに誰が冷静でいられるだろうか。バーンスタインは神にも等しい偉大さで、
この演奏空間に降臨している。
最後、第4楽章で「死に絶えたように」と指示された、切れ切れの吐息のかすかな喘ぎは、
音楽というもののある種の"極限"だろう。
ナチスの弾圧によってユダヤ人マーラーの音楽は戦後も忘れ去られる寸前にあったが、
それを復活・隆盛させ、こんにちベートーヴェンに次ぐ人気交響曲作家としてマーラーを
不動の地位に押し上げたのは、バーンスタイン最大の功績である。
彼がマーラーをとおして何をメッセージしようとしていたか、
ベルリン・フィルとの一期一会のこの奇跡的名演に集約されている。