数年前、在京の欧州某国の大使からピアノ演奏と晩餐の会に招ばれた。その国
の、もう若くない女性が現われ、ショパンの「雨だれ」とかドビュッシーの「月の光」とか、
名作ではあるが技術的に易しいことで知られる曲ばかりをよたよたと弾いた。
客は一様に困惑の態で、お座なりという言葉を絵に画いたような拍手がぱらぱらと起った。
やっとプログラムが終わって、大使がどんな挨拶をするかと同情して見ていたら
、「皆さん別室に食事の用意が出来ていますからそちらへどうぞ」とだけ。食事の最中も
食後のコーヒーの時も、客の中の誰一人として音楽を話題にしなかった。
どこで何が間違ったのか、未だに分からない。

それはピロコさんがよたよた弾いたのでしょう