97年にバイロイトへ逝きました。
もちろん、チケットなんて持っているわけがありません。
はじめから、ダフ屋より買うことを予定して逝きました。

マイスタージンガーの日に、会場近くで「チケットを譲ってください」と
ドイツ語で書いた紙を持って立っていたところ、建物から黒服を着た小柄で
白髪の老人が出て来ました。
一目で、ヴォルフガンク氏だと分かりました。
ぼちぼち集まり始めていたタキシード、イブニングドレスの人々は彼に気付き、
ちょっとその場がざわつきました。

しかし、彼の目は、まっすぐに自分のほうへ向けられていました。
そして、「しっしっ」というような仕草をしたのです。
彼は、それだけで建物の中へ消えました。

私はその後、ダフ屋のにいちゃんからチケットを高額で買い、会場へ入ろうと
しましたが、スタッフに事務所へと連れて逝かれ、事情聴取を受けてしまいました。
そのため、第一幕は別室の、おそらく気分が悪くなった人用の部屋で、中継の
大画面で観ることになりました。

その数日後、今度はトリスタンに挑戦しました。今度は、正規の値段で売ってくれる
ひとがいて、そのひとと並んで観ました。

何だか、こう書くと大したことない話ですね。逝ってきまつ。