マタチッチのイタリアオペラというと思い出すのは、1971年のNHKイタリア
歌劇団の公演でのリゴレットだな。パバロッティがマントヴァ公を歌ったこの
リゴレット、マタチッチと歌手たちの折り合いが悪く、マタチッチは憤慨して
初日の公演だけ指揮して帰ってしまった。それでマタチッチの方が後ろめたさ
を感じていたのか、N響側がその行動を問題視したのか、マタチッチは数年間
N響の指揮に現れなかった。最近では誰も語ることのない、マタチッチの日本
ゴシップ。

今、むかしの記憶をたどると、このリゴレットの指揮はリズムや旋律線をグリ
グリと妙に押しまくる、やや奇妙奇天烈なリゴレットだったな。女心の歌でも
パバロッティが歌いにくそうにしていた。余談ながら、この女心の歌のアリア
の後で聴衆の女性の一人が感激のあまり舞台に駆け上がり、パバロッティの前
で握手を求めたが、パバロッティはそれを無視した、などという日本のオペラ
舞台では前代未聞の珍事件があったのも、このリゴレットの時。