グールドは、彦山光造的に言えば、「異能」な音楽家だと思う。
あんな不健康な生活を送りながら、「スポーツ的」とバーンスタインは
言ってるし、あれほど対位法を好んだ人も珍しい。
だが、それは、グールド的表現をすれば、「相手を迎え撃つ」ための、切り札
だったと思う。ノン・レガート奏法も、決して垂れ流してはいないしね。

カナダのトロントを訪れると、決まって「グレンは****でね!」という
人に出会う。まあ、カナダの「人間国宝」なのだから仕方がないが、
死して尚、これほど人を魅了している演奏家も珍しい。
狂信者ではなく、「盲信者」は確かにいる。でも、渇きを感ずるリスナーにとって、
グールドは「オアシス」であることは否定出来ない。
少なくとも、脱水からはまぬがれることが出来る。
最近のピアニストは、聴衆に渇きを与える人が多い。
特にひどいのが、ひからびた「ドビュッシー」を聴かせて、有頂天になっている
某女性ピアニストだ。ミイラのような音楽しか出来ないのだが、「盲信者」は、
音楽なぞどうでもよく、エジプトのミイラを興味深く観察するように、ピアニスト
を観ている。グールドが聴いたら、大笑いするような、こっけいな図である。