アナログの場合の問題点ですが、製品化までの工程数が多すぎることと、
針の溝という特性から、逆相の音に対して極めて弱いことなどがあげられます。
とくに、私達の耳は、位相差で音の方向を覚知するのですが、アナログでは、
これを同相の音量差で表現しないとカッティングできないんです。逆送の大き
な信号がはいると、LRの溝が真中の線を越えてしまいます。ご存知のように
ステレオでは二つの信号が一本の溝に掘られています。つまり、同じゆれ方で
LRが流れていれば問題ないが、これが逆のゆれ方だと、波形のピーク時に真
中の溝をこえて交差しますよね。とうぜん、これではカッティングできません。
しかるに私たちの耳は左右逆方向を向いています。
つまり、耳自体の構造とその音像を覚知するシステムが逆相を要求しているわけです。
しかし、アナログレコードでは記録できない。
例えばワンポイントマイクで録音したテープにはいった音をそのままカッティ
ングできない場合も多いのです。この場合、その音量を下げて、溝がクロスし
ないようにしてカッティングします。
マスターテープの録音エンジニアに対してカッティングエンジニアからクレー
ムがつく場合も多かったのです。
こうなると、音源から製品への流れが、テクニカルな条件のフィードバックに
より規制されます。
この実際のシステム自体が、音源を、最後にカッティングしやすいように作
る、という作品本来のものと離れたビジョンに基づくことになりますよね。
私にとって、アナログの最大の弱点は、ここです。
つまり、アナログレコードは、たった1本の溝にすべてを詰め込もうとすることに無理があるわけですな。