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いや、ヨーロッパの中でもフランスは特にステレオ盤用の再生装置の普及が遅く、
1960年代の前半からようやく普及しはじめたステレオLPも、モノラル用の再生
装置でかけられるように求められた。そこでレコードメーカー各社は、フランス
市場では上記のGravure UniverselleというフォーマットのLPを発売し、モノ
用の装置でも再生可能であることを謳ったが、特にコンサートホールのシンクロ・
ステレオのLPは、明らかに(旧来の)モノラル用カートリッジでもかけられるこ
とを前提としていた。詳しい技術的な原理は今でも不祥だが、左右両チャンネル
の音(とくに低音域)に最適な位相差をリアルタイムで与えて、45/45ステレオ方
式における縦方向の不均等振動成分を最大限に減少させたという話を読んだこと
がある。その原理のせいか、ステレオ再生してみると左右の音(とくに低域)のク
ロストークが悪く、高域は何かしら伸びの悪い再生音だった。コンサートホール
自身も、その方式の弊害を自覚していたのか、1960年代中頃からフル・ステレオ
方式のLPを出し始め、これにはさすがにGravure Universelleの刻印はなかっ
たと思う。不思議なことだが、コンサートホールは世界中で同一原盤によるスタ
ンパーを使い回ししていたのか、シンクロ・ステレオのLPが後からフル・ステ
レオとして再発されることはほとんどなかった。

これに対して、1960年の中頃から英デッカなどがジャケットに表記した「モノ装
置でも再生可能」は、たしかに旧来のモノラル用カートリッジでの再生までは考
慮されていない。改めて手近の何枚かのLPのジャケットを見直したが、そこに
掛かれていることは「ステレオーモノ両用型のカートリッジか、内部でモノラル
結線されているステレオ型カートリッジを取付けたプレーヤーで、モノラル再生
が可能」と書かれている。つまりこの年代になると、レコード先進国のイギリス
で発売されているモノラルカートリッジは、その多くが内部的にはステレオ用の
製品の転用品になっていたということだろう。