さてどうでしょうか。リヒテルは1960年ごろに西側に出るまで、
バックハウスやケンプの演奏を聴いていたのでしょうか。
鉄のカーテンの向こう側では、モスクワ音楽院、ペテルブルク音楽院
という2つの大音楽院を中心として、音楽家の育成が行われていた。
ちなみにこの2つの音楽院は、19世紀を代表するヴィルトゥオーゾ、
アントン・ルビンシテインの弟で指揮者であった、
ニコライ・ルビンシテインが設立したものなんですけどね。
ここを拠点として、帝政時代から共産党独裁時代にまたがって、
いわば音楽エリートが養成されていたのです。
バックハウスやケンプの流派とは全く隔絶された流派。
そこで、リヒテル、ギレリス、ヴェデルニコフ、グリンベルク、
ソフロニツキー、ユージナなどといった大演奏家が生まれた。
バックハウスを知らずにリヒテルを語れないというのは、おかしい。
それはあまりにドイツ派というものを神格化した、古い見方だと思う。