ヴェデルニコフのハンマークラヴィーアは、モノラル録音という制約はあるが、
聴いているうちにそんなことは忘れてしまう。
彼のフォルテは、ロシア人にありがちな、雷のようなフォルテではない。
ずっしりとした、重い音なのだが、聞き手を抱擁するようなゆとりがある。
あたかも、深海の底から響き渡る、大地のいぶきのように。
そんな音をもってして奏でられた第3楽章は、聴いているうちに、
まるでブルックナーの後期交響曲のアダージョかと錯覚するほどだ。
不思議なことに、彼の弾く音楽は、どこか悲しい。
なぜかと言われても困るのだが、どういうわけか、悲しい。