近頃よく耳にする風説の流布は、後者の場合を説明する言葉です。風説とは「世間で取りざたすこと。また、その噂。あるいは風評」(大辞林)とあります。
そして流布とは「世間に広まること、広く行われていること」(同)とあります。
まあ要するに「世間に噂を広まらせること」とでも説明されるでしょうか。

 本回で考えたいのは、株式市場における風説の流布です。証券取引法第158条は「相場の変動を目的とする不正行為」を禁じていますが、その中に「相場変動を目的とした風説の流布を禁じる」と規定しています。
ただし、くせ者なのは「相場変動を目的として」という点で、投資情報誌は単に情報を提供しただけなので罰せられることはありません。
どんなにどぎつい噂を振りまいて企業イメージを引き下げ、株価を引き下げたとしても、相場変動を目的としていなければ、許されるのです。
そのおかげでポン太も好き放題に書くことができるというメリットがあります。
客観的には風説を流布した前後で自らが株式取引を行って利益を得たかどうかが判断の目安になることになります。
過去に立件されたのは、たぶんエイズワクチンの臨床試験に成功したと発表して株価を引き上げた事例ぐらいでしょうか。

 つまり、誰が流布したか、あるいは流布した個人が株式取引で利益を得たか、を立証できなければ良いことになります。
つまり風説の流布については野放し状態であることになります。
例えば一連の総会屋事件では「○○証券の役員が逮捕されるらしい」という風説で証券会社の株価が上下しました。
東食では「会社更正法の適用は確実だ」と言われて1円の株価が9円まで上昇しました。
また山一證券では「廃業した際の配当は1株5円だ」と伝わって株価が1円から5円まで切り返しました。
近いところでは大倉商事が「大口取引先に逃げられてダメらしい」と宣伝されて株価が100円を割り込みました。
一応、根も葉もない噂なのでしょうが、その与えるインパクトの大きさと株価への影響度を測りながら上手な風説を流してきます。
(政冶の研究No.30より引用)