カザルス・コルトーのベートーヴェンを昨日聴いた。
コルトーは終始自分のペースを貫き通す。指は全く回らず、アンサンブルが
成立していない所も随所にある。
しかし、一体何という演奏なのだろう。
極端なテンポとダイナミクスのコントラストにより、濃厚でグロテスクですら
ある表現主義的ピアノ。それを受け入れつつ、あくまで真摯に高みを目指すチェロ。
2つの偉大な魂が結びつきを求めながらも決して一致することのない、葛藤と
哀しみと、それ故にこそ姿を現すあまりにも痛ましい美の姿。

ティボーとのトリオを解散後、コルトーがナチスの側に付いたための決裂、
ティボーの死などを経て20年、再びまみえた2人の胸に何が去来していたのかは
知る由もないが、ここには疑いもなく20世紀の音楽史に残された決定的な瞬間の
1つが記録されている。