人を依怙地な自己主張に追い込むもっとも効果的な方法は、彼の自己喪失の
恐怖を刺激することである。彼は譲っても別にどうということはないほんの
ちょっとした一歩でもかたくなに譲らないであろう。そのときには、「おれ
は損得なんか問題にしていないのだ」と、かえって優越感をもっているであ
ろう。自己喪失の恐怖は、人格構造のごく浅い層のものでしかない利害打算
と違って、根源的な恐怖だからである。