吉田秀和はよく小林秀雄と比較されるけれども、俺は以前から小説の方の神様である
志賀直哉になぞらえるのが正しいと思ってきた。
何の変哲もない風景の描写が確固とした別世界の認知と繋がっているという点を、
小林のように大上段に構えることなく、自然な風情でしかも明確に文章にしていく。
外国人なら奔放な想像力と凝り抜いた文体で脂ぎった表現にするところを
吉田秀和は水が流れるような筆致で、日本人特有の文章としては最高度の洗練に達している。