>>770
じゃとりあえずこれ。

2月5日、坂本龍一からのメールで、前日クセナキスが78歳で死んだことを知る。
1950年 代半ばから前衛音楽の先頭を走り続けてきたこの作曲家を失って、
20世紀音楽もいよいよ 終わったという印象が深い。
頑固に前衛的な作風を守り続けてきたクセナキスは、
一時は 聴衆に飽きられたかとも思われたが、
近年、若い聴衆に「再発見」され、CDも次々に発表さ れている。
最近のCDの中でも「オーケストラ作品集」vol.1(TIMPANI 1C1057)という一枚は
いかにもクセナキスらしいものだった。
クセナキスはさまざまな作品を残したが、
とくに重要 なのは大量の音をダイナミックかつ
ストキャスティックに動かしてみせるオーケストラ作品だ ろう。
それは、白亜の大理石のギリシアではなく、もっと古い赤土のギリシア、
あるいは、ビ ザンチン帝国やトルコ帝国などさまざまな歴史的勢力に支配されたあげく、
近代に入っても 戦争と内戦に苦しみ、
今もEUの東南端で政治的な緊張の中にあるギリシアから生まれてき た、
爆発的なエネルギーをもつ音楽なのだ。
とくに、ホメロスやサッフォーの冥界に関する詩 句を選び出して使っている
「アイス」(80年)は、聴くのが苦痛と言っていいほどの剥き出し の力でわれわれを襲う。
それを最大音量で流しながら、恐るべき音の洪水に身をさらすこと こそ、
一切の妥協を知らなかったあの音楽の革命家にふさわしい喪の作業なのかもしれな い。