ところで、私は新書という形で本を書きたくはなかった。本の値段が安すぎる
からだ。東京の物価を考えてみるがよい。デフレと言いながらも、銀座で
昼ご飯を食べれば千円くらいかかるだろう。CDが安くなったとは言っても、
国内メーカーの廉価盤はやはり千円だ。なのに、なぜ私がけっして少なからぬ
経験や時間を投入した本をたった数百円ぽっちで売らねばならないのか。
高校生がスーパーでレジ打ちをすれば、一時間で稼げる値段なんだぞ、私は
大学の近くのドトール・コーヒーでカフェ・オレとサンドイッチという質素は昼食
を取るが、それだって六百円以上するんだぞ。本とは、そんな値段でしか売れ
ないのか。

許光俊・鈴木 淳史『クラシックCD名盤バトル』より