昔(漏れがレコ芸を読んでいなかった頃)ドナルド・キーンのエッセイが
レコ芸に連載されていたことがあったそうだ。それを今は旧中公文庫で
読める。このエッセイは大変おもしろく、また著者の知性と音楽への愛情を
感じるし、オペラなどに関しても漏れに与えた影響は大きかった。

こういう「音楽」を仕事にしていない、越境的な記事があった時期は、評論
も刺激を与えられ、レコ芸自体も元気だったんじゃないかと想像してみたりもする。

一連のエッセイの中に、まさにここで話題になっているブラインド・テストの
話が登場していたよ。それによると、あるニューヨークのラジオ放送の番組は
実際に二、三人の評論家を立ち会わせて、ブラインド・テストをさせ、その
評論能力を試すということをしていたらしい。ハイティンクのチャイ5は総員
絶賛、ブラームスVnコンチェルト(ミルシュティン/ヨッフム)は貶し倒し
というエピソードも紹介されていた。

まあ、日本の評論家はそんなことできんだろうな、みたいなことをレコ芸に
書いてよこしたキーンという人の大胆さもすごいけど、今も状況は変わって
いないだろう。漏れとしては、本当によい音盤情報を一般に報告するという
責任ある仕事を受け持っている評論家たちは、常に感性をチェックされる
試練に立たされるべきだと思う。

速報性という点では2chにもかなわないくせに、ジャケットを見ただけで、
ペンを取る奴がまかり通っているという状況が(これは言い過ぎかな)、
今日のレコ芸の凋落を呼んでしまったのではないか。

あと職業倫理の点から言えば、ライナーノートを書く奴は公正を期するのを
建前にした媒体にものを書くなと言いたいね。もっとも現状では無理だろうけど。