東京新聞 4月9日(火) 本音のコラム 『RとL』 天沼裕子

 「マグデブルガー・フォルクスシュティメ」紙に先週末載っていたある
旅行公告の見出しに驚かされた。ドイツ語のスペルが堂々と間違っていた
からだ。それも明らかに意図的とわかるように。
「大規模、中国、周遊旅行」とあり、この中の3カ所「R」で綴るべき
ところが全て「L」になっている。発音上、この2つの子音の区別がつき
にくい中国人を揶揄しての広告だが、ドイツ人読者が一笑に付しておしま
いのこの広告、中国人はジョークと受け取ったかどうか。
 中国人だけでなく日本人の耳にもRとLの聞き分けは難しい。先ほどの
見出し、旅行先が「日本」でも同様に揶揄されていただろう。
 日本語の場合を考えると、外国語のRとLは、カタカナのラ行でしか表
せない。逆にラ行のカタカナで表記された外国語を、アルファベットに置
き換えるときも、RだかLだかはっきりしないので、その都度辞書を引き
ねばならず面倒だ。
 ドイツ語は随時スペルが見直され、5年ごとに新しい辞書が出版されて
いる。研究され進化し続けるドイツ語に対し、日本語は国際的に非実用的
な伝統をいつまで守り続けるのか。問題のある子音はほかにもあるが、少
なくとも新しいカタカナ「R」行を当用し、発音と文字一致の問題を解決
すべく、国語大改革への取り組みがあってもいいと思うが(指揮者)