バッハもいいです。
たしかに、晩年のはよれよれといわれればそうかもしれないし、
あれは様式的に間違いだという人もいるかもしれないけど。
だけど、ここではかけがいのない詩人が歌っている。フランス組曲第5番。
この珠玉の1曲を、ケンプはごくたんたんとひきはじめる。そこには
無限の陰影がこめられているのに、やがて気がつく。繊細なミクロコスモス。
ブーレの旋律はどこまでものびていき、最後に静かにやってくるジーグ。
ふと見上げた空の色に感動すること、ありませんか。
この演奏、そうしょっちゅうは聴きません。ときたま、思い出したように
聴きます。そして、そのまたときたまには、涙することもあります。