今、例えば金正日と握手してあの国旗が飾られた中で指揮する指揮者を誰が
反体制のヒューマニストと見破れるかな。
リアルタイムでそんな映像を見ていたらいかにトスカニーニやワルター、
カザルスでもフルトヴェングラーは少なくともナチの協力者と思いこんで
しかたがないだろう。むしろメニューヒンが例外と思って良いくらいだ。
 あのムラヴィンスキーだって生前はソ連の看板指揮者と思われていたぐらい
だし。実際はソ連でもロシア聖教を信仰したり、共産党推薦の演奏家でも
無能なら断固としてつっぱねたり、演奏旅行先で楽員が亡命したことを
糾弾されたら「彼らは我々のオーケストラから逃げたのではない。あんたら
の国家体制から逃げ出したのだ。」と言ってのけたそうだ。
共産党の御用指揮者、権威の権化みたいに当時見えていたのは、ソ連の
宣伝工作とムラヴィン自身の最低限の処世方法だったんだろう。
 歴史は人間を飲み込んで行く。その場に居合わせた人間が、後から考えた
正しい(らしい)判断をしなかったと言って糾弾するのは酷だろう。