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 トスカニーニがデッドな響きを好んでいたということを裏付けるような
信頼できる情報は乏しいと思う。むしろ、RCAから発売されていた
NBCライブやRCAスタジオ録音のLPやSPの音質に満足していなかった
ことを示唆する情報がいくつかある。
(1)1952年ロンドンのブラームス演奏会の
あとでウォルター・レッグに、『自分がもっと若かったら今までに発売した
レコードを全て廃盤にして全レパートリーをレッグと録音し直したい』、
と述べた(レッグのGramophoneとのインタビュー)。
  廃盤にしたいという対象が市販レコードのすべてであることから
すると、トスカニーニの不満は、個別の演奏ではなく当時のRCAの趣味で
一貫されていた音質に対して向いていたと考えてもよいのではないか。
(2)極端な電気的操作を加えたあるNBCライブの編集済テープ
をRCA技術者がトスカニーニにきかせて発売承認を求めたときに、
トスカニーニは最初の数小節を聴いただけで、
『お前たち(RCA技術者)は私の演奏になんというひどいことをしたのだ!』
と怒りを爆発させて部屋から出て行った(現在アメリカのアーカイブで
トスカニーニの復刻を担当しているあるエンジニアによると)。
(3)ベートーベン・ピアノ協奏曲第1番トスカニーニ/ドーフマンの
1945年RCAスタジオ録音についての英文投稿から:
RCAの技術者はリミターによってオーケストラのトゥッティを
押しつぶして10dbという狭い枠のなかに押し込んだ... 
グールド・バーンスタイン/NYPやルービン/ホグウッドの録音では、
第1小節のPPのから導入部の終わりの大きな音量の箇所(102小節のsf、
105小節でピアノソロが入る前)にかけてだいたい25-27db の
ダイナミックレンジがある。この1945年RCAスタジオ録音では同じ部分で
10dbしか音量が変化しない。この差は大変なものである。
1932年のシュナーベルの録音(ArabesqueのCD復刻)であっても同じ部分を
測定すると18dbの幅がある。78回転SPのマスターを高い音量レベルに
維持しようとして、RCAの技術者とプロデューサーが電気的操作において
限度を超えてしまったのは間違いない。