ゲルギエフ/キーロフ管の「マイスター序曲」
 まず、第1部の「巡礼の合唱」。遅めのテンポにまるでオルガンのような充実した
低音。ローマ巡礼する者の罪深さ。それに対し第1部中間からの、ヴァイオリンの
キュリュッ・キュリュッ・キュリュッという対旋律の扇情感。これに呼応した金管群
の咆吼。このターンホイザーの情感の深さ。
 続く、第2部「ヴェーヌズブルグの音楽」。あえて低音を薄くしたうえで、木管群
を全面に出し、女性的華やかさを演出。また、ムジークフェライン大ホールゆえか、
オケの弦の優美なこと、淫靡としかいいようがないほど濡れ濡れ。さらに、特筆すべ
きは、ゲルギエフのテンポ設定の妙。アッチェレランドを多用したそのアゴーギク
は、カルロス・クライバーを彷彿させるものがある。この、緩急を繰り返すたびにテ
ンションをあげていき、クライマックスへと突入(ほとんどSEXまるだし)。
 そして、第3部。雄叫びをあげる金管群(オス)と、それに交わる弦楽部(メ
ス)。これらを煽動する木管部。ターンホイザーの愛欲・苦悩。あるいは爆発的歓
喜。金管対旋律の半音階がこれらを、いやがおうにも深める。そして、結尾部におい
てはホ長調の主和音を上声部をやや高めにとり、罪の浄化へと至る。
 この充実感、これを聞かずして、もはやワグネリアンの資格なし。2001年9月
1日ムジークフェライン大ホールにて。