(前からの続き)
彼女は、同様に賞賛されるべきラルフのフロレスタン(EMI 1950の
ザルツブルグのパツアークのみがこれを超えうる)と組んでいる。その
著名なオーストリー人のテノールのように、このスウェーデン人は苦も
なく歌い、生来の正しいスタイルを保ち、まったく誇張や力みがない。
実際驚くのだが、しばしば歌手や聴衆を試すようなこの役が、これほど
苦もなくラルフによって歌われるのを聴くと、超然としたものが生まれ
くる。シェフラーは、この録音で、ピツアロとしては、6年後のザルツ
ブルグ録音よりも役を確立しているかのようにさえ思われ、より新鮮で
安定した声を持ち、同じくらい迫力がある。ゼーフリートはこの時24歳
で、誰もが期待できるようにチャーミングで魅力的なマルツエリーネで、
後の録音より声がいい。クラインはやや未熟な、若いヤキーノだが、性
格付けに成功している。アルセンはロンドンでドン・フェランドの役を
歌っており、ロッコでは自然で暖かく歌うものの、一回か二回、怪し
気な発音をしている。ネラリックは木の香りのするドンフェランドだ。
ベームの指揮は正確で、重量感があり、ロマンティックなものである。
この高くお勧めできるフィデリオへのボーナスとして、Preiserは、コネ
ツニのまばゆいばかりのReziaの高貴なアリアを収録してくれている。彼
女の歌は期待と喜びにみち、彼女の「Huon!」という叫びは心を暖かくさ
せる。ここでも彼女は苦もなく歌い、どこをとっても破綻がない。この録
音の日付けはわからないが、フィデリオの録音よりも音が良い。