モーツァルトの楽譜をはじめて見たとき、私は涙がとまらなかった。
同時に、作曲家としていっぱしの人間になったと思いあがっていた
自分を恥じた。小一時間ほど恥じた。
シンプルだ。驚くほどシンプルだ。しかし、このメロディーはどう
だろう。このハーモニーはどうだろう。作曲と言う限られた制約の
中で、モーツァルトはこんなにも羽ばたいている。

私は自分の書いた楽譜を破り捨て、海に向かって投げた。楽譜は
波にさらわれ、やがて見えなくなった。