中学生の頃、ディスカウントショップなんかでよくセルフバーゲンをしていた。
 「セルフバーゲン」という言葉はあまり知られていないが、ぼくが考案したものだから知っている人は全国で3人程度だろう。
店による値引きではなく、客自身の手による値引きの意。つまり、値札をこっそり貼り替えてレジに持っていくのである。
当時はバーコードシステムが普及していなかったので、この手法でまんまと安値で買うことができた。
例えばカセットテープ5本組の値札シールを剥がして3本組の値札シールと貼り替える。
すると、2本分の値段がセルフバーゲンされる。かなりのお買い得である。
 さらに通常のバーゲンがそうであるように、セルフバーゲンも値引率をどんどん上げていった。
同じカセットテープにしても、一番安いテープの値札を使って最高級メタルテープを買うという具合に。
 それでも一向にバレなかった。レジ打ちのオバチャンはテープの値段のことなど何にも知らないのだった。
いやテープだけでなく、電気製品全般に疎いように思われた。
 そこでぼくは、さらに「最底値セルフバーゲン」を試みた。ラジカセデッキ(1万2千円)に
「398円」のシールを貼ってレジに持っていったのだ。
 が、レジのオバチャンもさすがに「あら、えらく安いわねぇ……」と訝っていた。
ぼくが「バーゲン品らしいですけど…」(実際にはセルフバーゲン品なんだけど)と言い添えても
納得しなかったようで、男性従業員のもとに訊きに行ってしまった。
 で、398円のラジカセを見た男性従業員は、「うーん」としばらく考えた後、「これは値札の貼り間違えやな」という判断を下した。
こんなラジカセを通常価格で買わされてはたまったものではないので、ぼくも
「あまりに安と思ったら、そういうワケでしたか。じゃあ、やっぱりやめときます」と言ってさっさと退散した。
 あのオバチャン、298円のヘアドライヤーは全然怪しまなかったんだけどなぁ。