小澤は世界の1流オケを渡り歩くだけの技術(バトンテク・スコアの読みの鋭さ)と政治力は兼ね揃
えていると思う。
それと耳がかなりいいので、パート間のバランスもいいし、細部にこだわろうと思えばとことん
こだわれる。
これは諸刃の剣で、一見流麗に聴こえるフレーズも、例えばベームのように音形や響きの力学に
忠実なものではなく、表面だけが磨かれたガラスのように人工的なものになってしまっている。
今回は選曲がうまくいって、そうした小澤の特質は主に美点のままで活きていたと思ったが、
「美しく青きドナウ」で底が割れてしまった感は否めない。他の曲では曲を構造ではなく感覚で
捉えて、それを丁寧に詰めていく手法もむしろ幸いした部分もあったが、この曲ではそういう
美点もあまり見えないほどにヤボったい演奏だった。アッチェレが不自然、リズムが重過ぎ。