例えば現在、巨匠と呼ばれるピアニストが存在する。彼らの中には生前の評価がそう
高くなかったものも含まれる。それが時の推移と共に伝説が加わったり、近年の
録音技術の改良により駆逐されてしまったSPなどの粗いが故に一種の郷愁をそそ
るような音色に頼ったりして高い評価を受けているに過ぎない演奏家がそうだ。

しかるにここに世界最高峰の技巧と希有な音楽性を併せ持った超人的ピアニスト、
川上敦子さんが燦然と登場した。西洋を中心としたクラシックのスタンダードに
バイアスをかけられたあなた方の様な頭の固い、音楽を愛する心を持たない聴衆
たちは、東洋の島国に歴史上ではリストその人しか比肩するもののない程の天才
音楽家が出現した事実を受領することができず、ただただ拒否し、言われ無き批
判を繰り返すばかりである。

たいへん嘆かわしい事態だと私は考える……。

何度も繰り返すようだが、世間で言う所のリスト弾き〜例えばシフラ〜の演奏は技
巧、音楽性、音色において川上さんの足下にも及ばないというのが公平な感想だ。