少なくとも、立体感・奥行といったものを感じさせる演奏ができているのは、
前回ショパコン上位入賞者のなかではユンディ・リーただひとり、とガラをきいて確認。

カケハシ氏が個性派という名のもとに活動できているのは、
彼の演奏にスケールの大きさとか立体感を要求しようと考える聴衆が皆無であるからと思う。
ああいう演奏で「盲目」という個性を背負っていない若手ピアニストに対しては、
聴衆は普通、残酷なほどに「音のデカさ」「ふみこみのよさ(藁」を要求するもの。
たいていのピアニストはその時点で無理やり自己の演奏を「より大ぶり」に聞かせるべく努力する。
佐藤美香をはじめとする「スケールはでかいし、よく弾けてるけど個性に欠ける」と言われている若手は
おしなべて全員「内容が薄まっても、まずは何よりもサントリーホールでの演奏にたえるだけの大きさ」を身につけるため、
それなりのステップを経ていまの奏法にたどりついたものと思う。

あれこれ考えてみるに、
前回ショパコン出場者のなかではユンディ・リーが音楽業界において「現時点でイチバン金になる」「イチバン才能と実力に恵まれた」
ピアニストであることはまちがいのないようにおいらは思う。
ただし、三十年後に人の胸を打つ演奏をしているのは、たとえコンクールやキャリアのためにであっても
自分の個性・持ち味を捨てずにコツコツとピアノを弾きつづける人でしょうね。
若手ピアニストの皆さん、どうか「まわりの都合」に消費されずに、がんばってくれたまへ。