声楽ではないのだけれど…
往年の名指揮者トスカニーニも、
トスカニーニ伝の著者のサミュエル・アンテックにこんな風に語っている。

「指揮するとき、私がどれほど苦痛か… 自分に決して満足できないのだよ、どうしても…
 …
 アンテック君、ステージに足を踏み出すとき、私はいつもとても緊張するのだよ。
 こんなに長い間指揮してきたのに、まるではじめて指揮するようにだよ!」

これを聞いたアンテックはビックリして
「そんなことはありえないでしょう」とトスカニーニに言ったが、彼は、
「いや、そうなんだ、そうなんだよ…」と首を振るだけだったと言う。

独裁者・指揮者の王者と言われた彼も、やっぱり緊張と戦っていたのだとわかる
妙に人間くさいエピソードだ。