聞いて、メロスは激怒した。
「呆(あき)れた王だ。生かして置けぬ。」
 メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛された。
調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
メロスは、王の前に引き出された。
「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以(もっ)て問いつめた。
その王の顔は蒼白(そうはく)で、眉間(みけん)の皺(しわ)は、刻み込まれたように深かった。