>>651
いやあ、皆さん深く味わっておられますねえ…
私などはSFにも疎いから、そういうスケールの大きなモチーフは
つい頭から外して物を見てしまっていると実感させられます。

黒澤明の「七人の侍」は、普遍的な人間の関係や行動律を
ドラマにし、絵にしたからこそ、全世界で共感され絶賛された
わけですが、同時代の批評は当時問題になっていた自衛隊の
再軍備化との関連にばかりかまけて、「内容は再軍備問題に
からんだ感もある(読売新聞)」などと、「再軍備に賛成か反対か
というスタンスをもっとはっきりさせればより傑作になっただろう」
なんていう頓珍漢な「批評」が横行して黒澤監督を辟易させて
いたものなのですね。

そういう資料を読んで私もなんちゅうアホだ、と呆れていたんですが
いま「君の名は。」の、クラーク、ラブクラフト、ウィリス、そして村上
春樹なんかのモチーフがてんこ盛りだという実態を見せつけられると、
この映画の後半の要素をなんでもかんでも「東日本大震災」と繋げて
見ていた私は、「七人の侍」を当時の自衛隊再軍備との繋がりでしか
見ていなかった手合いと同じじゃないかとヘコんでしまったものでした。

もっともそんな鈍い私でも、宮水家の遺影を見れば「ああ、入れ替わりと
予知能力は代々女性に受け継がれてるんだな」と分かったし、父親が
三葉の説得に応じたのは二葉の面影を見たからだ、というのもすぐ
呑み込めたつもりです。
「運命だとか未来とか手の届かない所で恋をする」というのは落下した
彗星のかけらとかつて落ちた隕石のランデブーのことだとも思ったし。

「映画というのは映画館の外でちゃんと勉強してきた人が、映画館の
中では頭をカラッポにして見るものだ」
「傑作はつまらない知識取っ払ってみれば面白い。ただし面白く見る
ためには付け焼刃じゃない教養が要る」
という言葉をかみしめる昨今です。