小林よしのり

宮崎駿の作品は画力で圧倒されて、その世界観も面白いと思ったが、
作者の意に反して、「日本的感性って凄い」という日本人の自己満足を育ててしまったかもしれない。
だが、自分の感性を鈍らせないためには、見ておかねばならないアニメ作品だと思う。

新海誠の『君の名は。』も、見ておかねばならない作品だった。

東北の震災と、福島第一原発事故のあと、今度こそ日本人は変わると思ったが、
政治的には何にも変わらなかったように見えた。
しかし日本人の深層心理に、実は大きな変化を起こしていたことを実感させてくれるのが『君の名は。』だった。

わしはこの作品を10代・20代の若い人たちが見ていることに注目するし、大変喜ばしく思う。

すでに6週連続1位、興行収入130億円だそうで、新宿バルト9では、公開1か月を過ぎても1日10回上映し、
平日も含めて満席が続き、年齢層も広がっているという。
新海監督の過去作品も見てみたが、『言の葉の庭』も『秒速5センチメートル』も面白かった。

「男系原理主義」との戦いは、時代の変化を感じとれない、
そして因習と伝統の違いも分かっていない、老化した脳との戦いでもある。

若者を無条件に礼賛するのは危険だが、彼らの無意識が何を
捉えているかを知っておかねば、今を分析することも、未来を予測することもできない。

『君の名は。』が10代20代の若者の潜在意識と響き合ってるのなら、その感性が次の時代を創っていくのである。

その次世代の感性と、「天皇は男性・男系しかならぬ」と妄信する感覚との間には、気の遠くなるような乖離がある。
ありもしない過去に向かうより、過去が内包される今を生き、未来を生きる準備をする方が楽しいとわしは思う。