■バケモノの子 A+
脚本B 音楽S コンテSS 作画SS

「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」の細田守監督の新作
結論から言うと脚本は過去の細田作品で一番微妙な映画だった
物語の序盤の粗筋を簡単に説明すると、家出少年の「蓮」が渋谷の路地から獣人だらけの異世界に迷い込んでしまう
そこで少年は「熊徹」という粗野な武闘派の獣人の弟子となり奇妙な共同生活が始まる、といったストーリー

序盤は面白い
細田守版の「千と千尋の神隠し」「ベスト・キッド」みたいな展開で
主人公の蓮と熊徹が仮の親子関係の中で、どういう風に絆を築きどう成長していくかを想像するだけでワクワクする内容
というのも熊徹というキャラクターが強さと優しさとツンデレを兼ね備えた「うしおととら」のとらみたいなキャラで
戦ってる時はかっこいいし、デレるとすごく可愛いという魅力的なキャラクターが作れている
主人公の蓮も子供時代は生意気ながらも子供らしい純粋さが描かれていて観ていて楽しいキャラクターだった

ただ中盤で主人公の蓮が9歳から18歳に成長した時に話の方向性がガラリと変わる
蓮は大人に成長し、人間の世界とバケモノの世界を行き来するようになり、2つの世界のどちらを選ぶか、自分は一体何なのかを葛藤し始める
そうなると中盤からはキャラクターで魅せるアニメではなくなり、やや退屈な青年の葛藤と選択の物語になってしまう

もちろんただの「ベスト・キッド」で終わらせずに話を大きく展開させるのは細田監督の手腕と言えるんだろうけど
ヒロインが登場してオマケ程度の恋愛要素があったり、蓮と同じくバケモノの世界で生まれ育った少年が敵になったり、、
序盤で伏線を描いてこなかった複数のキャラのドラマを無理に詰め込んだせいで、話の流れが強引になりメインテーマが中途半端になってしまった
結果的に一応「蓮」と「熊徹」の成長物語は描かれるんだけど正直物足りなかった
蓮が何を悩んで、何のために戦い、何を学び、どう成長し、選択したのか?そのテーマがボケてしまってる

また前出のようにこの映画からは色んな作品から影響が見て取れる
「サマー・ウォーズ」や「おおかみこどもの雨と雪」の強みは他でやってないことを描いたオリジナリティにこそある
素晴らしい作画のアクションシーンや爆破、炎等の美しいエフェクトによる映像美は細田アニメの新機軸と言える内容だったが
この映画の描こうとしてるテーマは王道でありふれた内容なのでそこの新しさは感じなかった

作画は本当に素晴らしい
特に獣人達の立ち姿、肉体美を駆使した圧巻のアクション作画による戦闘シーンは必見
CGモデルによる大量のモブを登場させた渋谷の街並みの描写も凄いし、オープニングの水と炎の演舞ショーも見所である

BGMは「おおかみこども」と同じく高木正勝が続投、ピアノメインの劇伴だった前作とは異なり
オリエンタルや北欧のワールド・ミュージックを荘厳なオーケストラに取り入れ、世界観を盛り上げていた
ただ映像との親和性や楽曲クオリティは高いものの、これといった印象に残るメインモチーフが無いのは残念だった
演技は役所広司、宮崎あおい、リリー・フランキーが素晴らしかった。まったく違和感がない声優っぷりでした

まとめ。
色んな展開を詰め込みすぎてキャラの感情の流れが強引で不自然なものとなり
二人の主人公、バケモノの子となった「蓮」と人間の親にしてもらった「熊徹」の絆と成長物語というメインテーマがブレて力を失ったため
細田監督の映画としては個人的にはイマイチな評価になってしまった
しかし、それでもそこらの深夜アニメの劇場版や、最近のジブリ映画(かぐや姫を除く)に比べると十分に面白い
というか「おおかみこどもの雨と雪」以降の邦画アニメ映画の中じゃ結局、一番エンターテイメントしてる映画だったまである